南米うるま園のパラダイスー2

 

うちなー的沖縄

南米うるま園のパラダイスー2

食べ物はさておき、ここでもっとも楽しかったのは会話である。私とほとんど同じ歳くらいの人たちだったのだが、とにかく面白い。このうるま園に来るときは家族単位なのだが、しばらくすると集団がばらけて、いろいろな人との交流が開始される。アサードだけでなく、そこには必ずやワインが介在している。とにかくワイン好きな人々である。沖縄だったらオリオンビールか泡盛ってことだが、ここではとにもかくにもワイン。最初は出身地ごとに集まっていたのだが、しばらくすると三々五々バラバラになってくる。
うるま園では、きちんと遊びの役割分担があるようだ。サッカー、ゲートボール、それにアサード&ワイン組である。それは一世世代と二世、三世世代、それにその中間派との区分と言う感じがした。二世、三世たちは当然のようにスペイン語を話す。親たちもちろんのことスペイン語をなのだが、同世代が一世だと、子どもたちも片言ながらウチナーグチが飛び出してくる。
驚いたことに「ヒティミティムン」であるとか「アサバン」という単語が次々と飛び交っている。おそらくは沖縄でもある一定以下の年齢では消えかかっているような気がする。朝ご飯、昼ご飯という意味なのだが、それをスペイン語と同じような感覚で語りかけてくる。
今回の旅行先は、アルゼンチン、ブラジル、パラグァイだったのだが、スペイン語もブラジル語もさっぱりだったのだが、こういう地域ではウチナーグチを操る人々はそれぞれの出身地の訛りを残している。その子供たちも同じように訛りを残しているのである。アサードはいろいろな組み合わせを可能にする。「ドウコウカイ」という単語をたびたび耳にしたが、それは「同好会」ではなく、「同航会」のことであった。同じ船に乗って移民をしてきた仲間ということで、そうなると同じ地域出身者ということにはならない。ワインを片手に、「あっちゃー(歩く)・あっちゃー(歩く)」をする中年オジサン(ときとしてオバサンも)たちが増えてくる。ようするに毎週のように集まっているから、全てが顔見知りなのである。同じ船で渡ってきた人、同じ地域出身の人、友達の友達は友達という雰囲気がうるま園中に広まっている。
これって、沖縄で言うところの、「いちゃりば・ちょうでいー」そのものである。
沖縄の諺で、はじめて出会う人でも兄弟みたいなものだ、という意味である。
そういう精神が当たり前のように目の前で繰り広げたれている。ひょっとして、沖縄では失われつつある光景かも知れない。