気がついたらいつも海や空のそばにいた。-2

 

うちなー的沖縄

気がついたらいつも海や空のそばにいた。-2

さっきまで泣いていたかと思うと、もう笑っていたりする…。子どもは辛さをひきずらず、いつも世界を新鮮な眼で見つめていて、その笑顔は大人の気持ちをのびやかにしてくれる。沖縄がゲンキな一因として、子ども人口が多いことも関係しているのかもしれない。
 藤原家のわんぱく3兄弟、飛翔(つばさ)くん、大地くん、大和くん。沖縄に移住した当初は、環境の違いに体がびっくりしたのか、3人ともぜんそくになり、眠れない夜も多かったという。現在のマンションに引っ越してからはだんだん症状がやわらぎ、今ではお母さんの奈津子さんを悩ませるほどゲンキだ。
 休日は目覚めるのがとびっきり早い3兄弟。
「タニシを採りに行きたい!」
道路でつながっている離島・瀬長島は、マンションの目と鼻の先だ。ひと泳ぎして、海の生き物たちと戯れる。潮風と波の音。いつまでいても、何度来ても、飽きることはない。
九州の海や空と色がまったくちがう。
 子供たちのもうひとつのお気に入りの場所は、瀬長島のすぐ北側にある那覇国際空港である。九州にいた頃は電車に凝っていたそうだが、今注目しているのはもっぱら飛行機で、種類にもくわしい。
 これは、陸上自衛隊の航空操縦士として緊急患者空輸にあたっている武俊さんの影響も大きいのだろう。
 飛行機が飛んでいく空を嬉しそうに見つめる子どもたち。
「空も海も九州とはぜんぜん色がちがいますよね。なんていうか…クリアで!」と話す奈津子さんの横から、仕事場が沖縄の空である武陵さんが
「空の上から見ればその違いがよくわかりますよ」と説得力のある一言。
 空はいつもおだやかというわけではない。夜間や悪天候のなかでも、武陵さんは日々、空へ飛ぶ。その緊張感はきっと、経験していない者の想像をこえるものだ。沖縄での勤務は独身のときにもあって、2回目だというが、今、家に帰ったときに4つの顔が迎えてくれることが、武陵さんを心強く支えているのだろう。
新しいものと出会うよろこび。
現在はすっかり沖縄での暮らしを満喫している家族であるが、奈津子さんは沖縄に来た当初、とまどうことも多かったという。
「島豆腐の独特の匂いも、沖縄そばもはじめは何これ!って感じでした。いやだいやだって言ってばかりいたんですけど、半年くらい経ったとき、体がなじんできたんでしょうね。市場に行って、おいしいものを見つけるのが楽しみになって…」
 あるとき、本島北部で出会ったヤンバル特産完熟パイナップルにはまった。その甘いこと、ジューシーなこと。今まで口にしていた輸入パイナップルと同じ名がつくとは思えないほど、おいしかった。
「ヤンバルでは250円ほどで売ってますから、いつも1度に50個くらい買って、シーズンに2、3回は買いに行きますね。帰りは重くて車が沈んでしまうくらい(笑)。内地の親戚や友だちにも大好評なので、まとめて送ってあげてます」
  いずれはまた転勤で引っ越していくかもしれない藤原さん一家。最後にら「もし沖縄を離れるこてになったら何がないと寂しくなると思いますか?」と質問してみた。
すると奈津子さんは迷わずら「パイナップル!」と笑って答えた。
子どもたちにとって沖縄を離れるという想像はつきにくいのだろうがらこれからどこで暮らしていたとしても、少年時代を振り返るたびにこの海や空の色を思い出すのだろう。