栄町に、ふかく、深く、静かに、沈む。-2

 

うちなー的沖縄

栄町に、ふかく、深く、静かに、沈む。-2

沖縄そばが美味しいと書いた。そこで「誰にん言らんきよー」法則を行使してみたい。健クンの作る沖縄そばは美味しいのだから、ここで出汁がどうの麺がこうのと言う気はさらさらない。たべてもらえばすぐにわかるのだから。

そばの話は傍に置いといて、と。飲む話にしよう。飲んで帰るとき、背中に健からの挨拶がある。「重さん、また明日」である。この声に引かれて、翌日も「重さんまた明日」になってしまう。ところで「栄町ナット」にはトイレがない。ない。というよりは必要がない。向かい側に公衆便所が専用みたいな顔をして設置されているから大丈夫であるわけさ。店の内側のドアにトイレと書いてみてもいいのではと思っている。

席は基本的に決まっている。よっぽど酔っていない限りは止まり木がいい。誰ともゆんたくしなくていいというのがいい。こちらが金を払っているのだから、自分の時間を誰にも邪魔されたくないという強い決意で飲んでいる。ところが強い決意はすぐにヘナヘナになる。誰かいるのだ。誰もいなければ割りばしの袋を広げてそこに現行の下書きでもいかない。

多士済済はいろんな意味で多士済済である。私を見つけたら必ず話しかけてくる気のいい常連のM姉さんがいると、その「魔」の手からは逃れられない。こちらの情報もかなり知っていていい加減な話は出来ない。店は暗いのに濃いサングラスの人はかなり怪しい。そして便所言って戻ってくるたびごとに指パッチンする。どういう意味があるのかと考えたが、それ以上は詮索しないことにしている。某泡盛メーカーの社長とはどちらかというと別の店でご一緒することが多いのだが、やはりここでも口癖の「ばかたれ」はよく耳にする。「ばかたれ」が乱発されるほど上機嫌なのだ。話をしていて面白いのは栄町市場界隈の人たちだ。M姉さんもそうなのだが、市場周辺の人々はかなり濃密である。飲んでいるときもそうなのだが、日ごろからの付き合いが深い印象を受ける。とにかく市場内の情報を共有している。かつては栄えた栄町なのだが、いまは正直言って斜陽をたどっている。そこをどうにかしたいと悶々としてかどうか、夜な夜な、周辺で商売を営んでいる若い人たちが集まってくる。ほとんどがジュニアたちのようだ。こういう時代の経営状態が追い打ちをかけるのだが、あらたな客もいるのだろう。事実、この界隈だけで全ての品が揃うのを確認した客もいるのだから。ということで今夜も「また、明日ね」を聞きに行く。