てんぷらの匂いと香水の匂いが廊下中に渋谷の「恋ぶみ横町」であそんだ。ー2

 

うちなー的沖縄

てんぷらの匂いと香水の匂いが廊下中に渋谷の「恋ぶみ横町」であそんだ。ー2

「てんぷら坂」で買い込んできたものだろう。市役所の中の廊下が、てんぷらから立ち上がる湯気で霞んでいた、というのはオーバーな話だが、それでも香水と混ざったような匂いがかなりたちこめていたものだ。

いまでこそ給料などは自動振替方式になっているが、以前だと直接手渡し方式であった。ここに飲み屋とサラリーマンの攻防戦が発生する。ほとんどの人は次のこともあるし気持ちよく支払うだろうが、なかには都合があって支払えないという人もいる。

とっさに机の下に潜る人、急に寝たふりをする人、さまざまである。凄い猛者もいた。廊下に集金のママを発見するや、ふわりと身のこなしも軽やかに窓を超えてバランダに逃げる御仁もいた。普段は、どちらかというと身体を動かすのは苦手そうな人だけになおさらである。この荒技は、桜坂というところが昔から火事の多いところで、飲んでいて「すわっ。火事だーっ!」という場面も多かったらしく、そうなると2階だろうが飛び降りることで自らの命を護るという習慣が自然と身についていたのだろうか。そこで鍛えた技だったとも言える。

てんぷら攻撃を察知するレーダーに長けた先輩などは、近くに喫茶店に待機して後輩達に給料袋を持って来させたりと様々な技を持ち合わせていた。

最近では見かけなくなったてんぷら攻撃だが、妙に懐かしい。いい時代だった。

※オキナワンてんぷら 天婦羅ではなく、あくまでもてんぷらである。てんぷらーとのばすと感じが出る。ソースで食べるのが定番。