むかし、「ハイカラ湯」があった。

 

うちなー的沖縄

むかし、「ハイカラ湯」があった。
世の中には逆現象という現象がある。
 こういうことは沖縄だけに限ってみても数多いはずである。いくつか例にとってみる。これは沖縄と沖縄を除く全国との比較である。まず、結婚披露宴だ。随分と前の話だが、従兄弟の結婚ということで東京に招かれて出かけていった。あまりな招待客の少なさに、ひょっとして会場を間違えたのではと、入り口で足がフリーズしてしまった。まさか、たったこれだけで披露宴なんて。なにしろ会場にら50人ちょっとしかいない。本土における結婚披露宴の状況を知らない人間をコケにしての、「どっきり」かと思ったほどだ。
 会場は細長い部屋で、その形にも驚いた。沖縄の人間として知りうる常識だと、披露宴会場はとにかく広いホテルのホール、ずっと以前だと貸しホールなどであった。男性招待客は一様に白ネクタイである。女性招待客も留袖姿多かった。このことも男性同様に近親者が多いはずである。新郎新婦を挟むようにして仲人夫妻の四人が奥のテーブルでかしこまっている。そして会議室みたいに招待客が両家に分かれるような格好で掛けていた。これから結構して仲良くするのだから、わざわざ別に対決するような席のあり方に興味が湧いた、というよりも奇異に感じたものだ。そして一番驚いたのは、両親が末席で、兄弟姉妹、叔父叔母、従兄弟という具合という具合に座り、最後の上座に友人代表が座っている構図であった。
 沖縄とはまったくの逆である。新郎新婦と関係が近ければ近いほど座席も近い。つまり、謙遜とかいう世界とは逆現象なのである。
 沖縄の披露宴会場での座席の配置は、とにかく一番にいい席が両親、その横に近しい親戚、その後ろあたりに従兄弟(従姉妹)連中やピヨピヨと何かうるさい甥や姪あたり、会場の真ん中辺に職場関係者、そして末席であるはずのステージ前に、披露宴の最初から最後までワイワイと騒いでる友人たちという配列である。まぁ、末席といってもステージに近いわけだから、そこが上座と言えなくもない。
 四方を海に囲まれながらも泳げないウチナーンチュというのも妙な逆現象である。山梨県や長野県などの人が海で泳げることに対する我々の畏怖感はかなり、あるにはある。いったいどこで泳ぎを覚えたのか不思議であった。川で泳ぎを覚えて河童になったと聞かされても、そもそも沖縄には泳ぎに適した川など皆無であるから、どうにも理解が出来なかった。