社長は、もっと真面目に泡盛をつくれーっ!-2

 

うちなー的沖縄

社長は、もっと真面目に泡盛をつくれーっ!-2

「ウィ、あなたが新垣博一さんなのご活躍ですね、ウィ」という雰囲気だったさらに言葉を続けて「ウィ、貴方はどうして八重ヤな出身なのにシンガキなの。普通、八重山ではニイガキでしょう、ウィ」と畳み掛けてくる。さて、困ったのはニイガキさん、おお、ロミオよロミオ、あなたはどうしてジュリエットなの状態であった。ニイガキさんはそもそも八重山の出身ではなく、座間味島のニイガキである。ウィウィと訳の分からないフランス語みたいに迫ってくる女性に口を少し尖らせて、「こっちの勝手でしょ」という感じになっていた。

止まり木友達の社長は豪快な方である。口は極めて悪く、いつでもバカタレを乱発する。こちらも手慣れたもので、私は影の営業部長で、よく行く飲み屋に社長のところの銘柄を置かして貰ったりしている。ただ、知り合いだからではなくて実際に美味しい酒であり、沖縄以外からの評判はかなりなものである。

ところが、最近になってこの酒を見かけることが少なくなった。あまりのも評判が良くて、ほとんどが本土向けに出荷されているためである。「それはないじぇ社長」と、携帯に電話を入れたのだが、社長はいつもと違って大きな身体を縮じめるようにして8携帯から相手の姿は見えないが、おそらくはそうであったはずだ)、蚊の泣くような声で、「ごめんなさい」をしていた。

最近になって、ついにいつもの飲み屋で久々に逢った。酒はどうなっているのですか!と言う前に先制の返事が返ってきた。大きな身体を折り曲げるようにして「ゴメン、ゴメン」を繰り返した。この関係、いつも原稿が遅れるミヤジャト重と編集者との関係に似ているものだから、社長の気持ちもわからないわけでもない。しかし、ここで甘えかしてはいけない。根をあげているのはボクだけではないのだ。この銘柄を愛している店の人たちとあることを考えている。デモをしてシュプレヒコールで声を挙げる。それも交際通りで。「社長は真面目に酒を造れー!」とか、「泡盛ファンを不安にするなー!」などと道行人に訴えようと思っている。ただデモだけでは面白くないから、フォークギター持って、頭にはバンダナでもキリリと締めて、馬鹿でかい声でがなりたてるようにして、歌ってけばいよいよ効果があるかも知れない。「俺たちは社長の酒が好きだー、社長の造る酒は最高だー」などと、つまり誉め殺し作戦である。きっと、道行ウチナーンチュや観光客は引いてしまうに違いない。これこそが作戦であり、社長はついに堪えきれなくなって、「バカッタレ、造ればいいんだろう」と言うはずである。それほどまでに好きな銘柄が飲めないということは辛いのである。ところで、いつもの店での久々の再開であったが、社長は自分の銘柄の泡盛ではなくて他社の酒を飲んでいた。

社長も辛いのね。