咲かせてみます 勝利の花を

 

うちなー的 沖縄

咲かせてみます 勝利の花を

 

島の各地に貼り巡らせたポスターのコピーが目を引いた。

熱く燃えるこの身体

誰も止めることはできない

この想い

咲かせてみます勝利の花を

一見、何のコピーかと思うほどだ。なにやら演歌っぽいし、男と女の壮絶な恋愛のようでもある。コピーから目をパーンしてみると、そこには「軽重量級優勝旗争奪戦」と鮮やかな朱でもって文字が描かれている。やはりボクシングかプロレスのタイトルマッチとしか思えない。

でも違った。

一群が王者を取り巻くようにして跳ねながらやってくる。チャンピオンはその名にふさわしく威風堂々としている。鍛え上げられた肉体美がそこら中に振りまかれる

「ワイド―、ワイドーワイドー」

おそらく小学校の高学年くらいであろう少年たちが独特の太鼓を打ち鳴らしながら先頭を往く。そのすぐ後ろからは一塊になって少年、中年、それになぜかしら若い女性たちも続く。戦争中の進軍ラッパを「パッパラパ、パッパラパ」と吹き鳴らす者もいる。

主役は露払いの少年たちをはべらして、ゆったりとまるで牛のようにノッシノッシと辺りを威圧しながらやってくる。あっ、牛のようにではなく、牛そのものの歩みであった。

徳之島は闘牛の本場である。沖縄も盛んだし、四国には宇和島がある。しかし、徳之島は一つも二つも抜けている感じがする。以前もそうだったが、今回も沖縄から多くの闘牛ファンが島を訪れていた。同じ闘牛でも何が違うのだろうか。沖縄では鼻綱を括ったままだが、徳之島ではガチッと牛と牛がぶつかった瞬間に鼻綱を切るという違いはあるものの、それほどの決定的な違いとは言えない。実際、徳之島と沖縄では、けっこう牛のトレードも行われているようで、闘牛大会に出場する牛の旧姓は沖縄姓であったり徳之島姓であったりする。

もともとが農家の娯楽として発達したことは沖縄も徳之島も同じである。インドネシアのマドゥラ島では農耕牛を使ってのレースがあるが、これも農閑期を利用しての数少ない娯楽として発達したことに相違はない。

ならば、いったい何が違うのか。

若い人である。牛の取り巻きもさることながら、会場内には圧倒的ともいえる若者が詰めかけていた。そもそも今年の正月元旦には、「昭和55年生成人記念大会」開かれていた。昭和55年生まれの同窓生たちが主催して、何と闘牛大会を開催していたのである。闘牛大会といっても、そう簡単なことではない。大会運営者には、おそらく一千万円を超える金額が必要なはずである。それを新成人たちがやってのける。市長に向かって、クラッカーを投げつけたり、単に集団心理でもって会場で酒をラッパ飲みしたりと、日本中の新成人の印象をすこぶるおとして、のちほど情けないほどの泣きを入れた甘ちゃん連中とはわけが違う。